現場で必要とされる“伝える力”

「こんなに“伝え方”が大事になるとは思っていませんでした。」
これは、民間でインストラクターを始めた直後、私自身が感じた正直な感想です。
自衛官として過ごした20年以上の経験。
その中で身につけたものは、体力や規律だけではありません。
「伝える力」こそ、現場で評価されるスキルだったのです。
自衛官時代に培った伝える力
私は自衛官時代、“格闘指導官”として部隊の隊員に教育を行ってきました。
戦闘訓練や体術の指導を通じて、言葉ではなく“体で伝える”ことの難しさと、その重要性を日々痛感していました。
また、教育部隊でも勤務し、新隊員や後輩に対して“教える立場”としての経験を重ねてきました。
相手の理解度に合わせて指導内容を変える力、根気強く向き合う姿勢──
これらは、当時は当たり前だと思っていたものの、今の仕事で非常に活きていると感じます。」
- 「言ったつもり」が通じない
- 「見せるだけ」では伝わらない
そんな壁にぶつかりながらも、相手の理解度を読み取り、繰り返し伝える力が磨かれていったのです。
民間でも求められている「自衛官のスキル」
実は、自衛官の経験は“言い換え”次第で、民間でも通用します。
以下のように、自分では当たり前と思っていたことが、評価されるスキルへと変わるのです。
自衛隊での経験 | 民間でのスキル表現 |
---|---|
格闘・戦技の指導 | トレーナー・実技講師 |
規律・時間厳守 | 信頼性・納期遵守 |
日常点検・装備管理 | 安全管理意識・設備管理 |
報告・連絡・相談 | コミュニケーション能力 |
弱い隊員のフォロー | チームマネジメント・配慮力 |



「考えるより体で覚える方が得意。」
そんな自衛官にとっても、現場で体を使って“伝える”仕事はたくさんあります。
安全教育の現場で実感した“伝え方の工夫”


現在私は、GWO(Global Wind Organisation)認定の安全教育インストラクターとして、高所作業・救助・火災対応などの研修を担当しています。
民間の現場では、自衛隊のような“統一された文化”は通用しません。
受講者の年齢も背景もさまざま。ときには海外の方が参加することもあります。
だからこそ私は、次の点を意識しています。
- 実技で見せてから説明する
- 図・写真・ジェスチャーを活用する
- 「なぜ必要か?」を自分の経験で伝える
- 理解度を見てテンポを変える



「難しいと思ってたけど、実際にやってみたら分かりました。」
そんな言葉が返ってきたとき、“伝える”から“伝わる”への手応えを感じます。
「体で伝える力」が活きる場面


ある研修で、海外から来た受講者が参加されました。
私は流暢な英語が話せるわけではありませんが、ジェスチャーと簡単な単語を交え、何とか伝えようと工夫しました。
結果的にその方はすべての訓練を理解し、最後には笑顔で「ありがとう」と言ってくれました。
「言葉より、伝わることが大事」
それが、民間の現場で実感したことです。
さらに、自衛官時代に経験した熱中症対応や止血訓練を例にして話すと、受講者の表情が変わります。
「現場で実際に起きた話」は、マニュアルよりずっと響く。
そう確信しています。
体で勝負したい人へ:考えるより動く力が活きる場所もある
実を言うと、私自身も**どちらかというと“体で覚えるタイプ”**なんです。
自衛官時代も、細かい理屈よりもまず体で動いて学ぶことが得意でした。
でも、民間に出てみると、“伝え方”で評価される世界が広がっていて──
最初は戸惑いながらも、少しずつ「伝える力」を後天的に身につけてきました。
そして今、私は実感しています。
体で覚えたことを、体で伝える力に変えていくこと。
それが、現場で信頼されるインストラクターとしての強みになっているのです。



「考えるのは苦手だけど、動くのは得意。」
そんなあなたの強みは、現場では必ず役立ちます。
まとめ|通用するかどうかは“伝え方”次第



「自衛官の経験は、民間で通用するんですか?」
そう聞かれたら、私はこう答えます。



「通用するかどうかは、“どう伝えるか”で決まります。」
肩書きや階級ではなく、今、誰のために、どんな想いで、どう伝えるかが問われる民間の現場。
でも大丈夫です。
その力は、あなたもすでに持っています。
日々の教育、報告、訓練、気配りの中にある“伝える力”を信じてください。
あとがき:あなたの中にも通用する力がある



「自分は教官経験なんてないし、考えるのは苦手…」
そんなふうに感じている方もいるかもしれません。
でも実は、自衛隊での生活そのものが、
- 伝える訓練
- 動きで見せる教育
- 周囲との連携
の連続だったはずです。
民間で評価されるスキルは、すでにあなたの中にある。
それを“どんな場面で使ってきたか”に気づくことが、転職の第一歩です。
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