「逃げた」と言われるのが怖かった。でも、あの時の決断は、今でも間違っていなかったと思う。
長年勤めた自衛隊を辞め、未知の世界である民間企業に転職したのは、安定を捨てた“逃避”ではなく、“挑戦”でした。
本記事では、僕がなぜ40代で民間への転職を選んだのか、そして実際に働いてみてわかったギャップや手応えについて率直に綴ります。
「このままでいいのか…?」と感じているあなたへ──一歩踏み出すためのヒントをお届けします。
自衛官としての誇りと「40代転職」への迷い
「辞めること=逃げること」
私は長年、自衛官として勤務してきました。厳しい訓練、任務の重さ、仲間との絆——そのどれもが私の誇りです。しかし、あるときから心のどこかで、ふと立ち止まる瞬間が増えていきました。

「このまま定年まで、自衛官としての道を歩き続けるのが“正解”なのか?」
その問いは、誰に言われたわけでもありません。ただ、自分自身の中から湧き上がってきたものでした。
「評価されない」違和感が転職を考えるきっかけに
転職を考え始めた頃、私の中には言葉にしづらい**「虚しさ」のような感情**がありました。



「なんでだろう。こんなに頑張ってるのに、報われてる気がしない——。」
自分でも、被害妄想だとは思いません。でも、どこか心の奥で納得できない場面が、いくつもあったのです。
評価が実力に比例しないこともありましたし、本気で取り組んだ仕事が組織の中で正当に見てもらえないと感じることもありました。
それは決して、自衛隊という組織を否定しているわけではありません。
むしろ、多くの面で誇りを持っていましたし、感謝もしています。



「でも、自分の価値をもっと納得できるかたちで実感したい——。」
そんな思いが、静かに、でも確かに私の背中を押していたのです。
40代自衛官が転職を決断した“決定的な理由”
自衛官としての道を極めたい気持ちは、今でも確かにあります。しかし同時に、「もっと広い世界を見てみたい」「民間という未知のフィールドで自分の力を試したい」そんな衝動も日に日に強まっていきました。



「逃げではない。これは、新たな挑戦だ。」
そう言い聞かせても、やはり葛藤はありました。
「本当にこの決断が正しかったのか」と、今でも時折、自問自答することもあります。
それでも、迷いに押しつぶされそうになりながらも一歩を踏み出したことで、私の世界は確かに広がったのです。
40代で転職を選ぶ不安と向き合う|家族と安定を守るために
決断には、迷いと恐れが常につきまといます。
- 「今の立場を捨てて、本当に後悔しないか?」
- 「民間で通用するのか?」
- 「家族にとって、この選択は正解なのか?」
40代に差し掛かった私は、家族を持つ一人の父親でもあります。生活の安定、子どもたちの進路、将来設計——どれもが簡単に捨てられるものではありませんでした。



「でも、このまま定年を迎えたら、挑戦する気力はもう残っていないかもしれない。」
そう思ったとき、“今”しかないと、心の奥底で腹を括ったのです。
民間で活きた自衛官のスキルと現場対応力
私は現在、民間のトレーニング施設で安全教育のインストラクターとして働いています。風力発電に関する国際基準に則った訓練(GWO)を提供する現場で、受講者に対して命を守る技術と意識を伝える日々です。
毎日が、新しい挑戦の連続です。
受講者は年齢も経歴もさまざま。工事現場の職人、再就職を目指す方、海外で働く技術者まで——本当に多くの人と接しています。その中で、自衛隊時代に培った力が活きていることを、私は実感しています。
「小さな異変に気づく注意力」「相手に合わせて伝える力」「状況に動じない冷静さ」
これらは、自衛隊の中で自然と身についた“財産”です。
そして、どの現場にいても、「人の命を守る」という想いは、共通しているのだと改めて感じるようになりました。
転職後に見えた世界|民間で得た“広がった視野”
民間の現場では、自分で考え、自分で動く力が求められます。曖昧な指示、変わりゆく現場、答えのない課題——それにどう向き合うかが、自衛隊時代との大きな違いでした。



「答えを待っていては、前には進めない。」
これは、私が転職後に学んだ最も大きな教訓の一つです。
また、転職によって見える世界も、人との出会いも、大きく変わりました。
「教える」ことの難しさと楽しさ。
「現場で働く人たち」のリアルな悩みと希望。
そして、「自分の可能性」を見つけ直すことの喜び。
転職して得たのは、収入や地位ではなく、**“広がった視野”と“自分への信頼”**でした。
自衛官のあなたへ|「辞める=逃げ」ではない
ここまで読んでくださった方の中には、同じように転職を考えている方、特に自衛官として長く務めてきた方もいらっしゃるかもしれません。
そんなあなたに、私は声を大にして伝えたいのです。
辞めることは、逃げではありません。
自分の人生に真剣に向き合い、挑戦を選ぶ——それは何よりも勇気ある行動です。
あの時、迷いながらも踏み出した一歩が、今の私の人生を切り拓いてくれました。もしあのまま自衛官として定年を迎えていたら、この経験も出会いも、得られなかったかもしれません。
挑戦し続ける未来へ|自衛官から民間へ進んだ理由
私はこれからも、安全教育の現場で、人と真剣に向き合っていきたいと思っています。そして同時に、自分自身も成長し続けていきたいと願っています。
過去の自分を否定するのではなく、そこから何を活かすか。
迷った日々も、決断した瞬間も、全てが今の自分を支えてくれています。



「逃げではなく、挑戦だった。」
これが、私が選んだ道です。