転職して気づいた「安定の中で見えていなかったこと」
私は長年、自衛隊という「安定」の象徴ともいえる組織で働いてきました。任務は厳しいながらも、役割と評価は明確で、やるべきことをやっていれば自然と評価されていく——そんな環境が当たり前でした。
現在はGWOのインストラクターとして、安全教育に関わる仕事に就いています。製造業や建設業、重機を扱う業種の方々に「命を守る教育」を提供するこの仕事は、自衛隊時代の経験を活かせる分野です。しかし、そこで直面したのは、評価のされ方がまったく違うという現実でした。
民間では「言われた通りにやる」だけでは評価されない

「なぜ言われた通りにやっているのに評価されないんだろう。」
民間企業に来て最初に感じたのは、この違和感でした。
自衛隊では「任務を確実に遂行すること」が評価の軸でしたが、民間ではそれだけでは不十分でした。
ここでは、“自分で考え、自分で動き、結果を出すこと”が評価される。
それに気づくまでに、少し時間がかかりました。
主体的に動くことで評価され始めた
評価されるためには「やって当たり前」のレベルを超える必要があると悟った私は、次のような行動を始めました。
- 受講者の反応を踏まえて、カリキュラムの改善提案
- トレーニング資材の配置見直しによる導線の最適化
- 現場での課題をすぐに報告し、対応案も一緒に提示



「自分にできることはないか」と常に考えて行動するようになったんです。
その結果、次第に任される業務の範囲が広がり、上司や同僚からの信頼も高まっていきました。
清掃という“見えない努力”が評価された瞬間
私が毎日行っているのが、始業前の清掃です。
特別なことではありませんが、私は誰よりも早く出勤し、施設内の掃除をしています。
「あの人が来ると、施設がいつも清潔に保たれてるよね。」
清掃は、自衛隊では“当たり前の行動”でした。
しかし民間ではそれが「プラスαの行動」として見られ、安全管理への信頼にもつながっているのだと感じました。
成果が収入に直結するやりがい
転職後しばらくは、年収が下がったのも事実です。
しかし、あるプロジェクトで主担当として信頼を得て以降、出張が増え、難易度の高い案件を任されるようになりました。



「これは、自分の力で得た評価なんだ。」
そう思えるようになってから、収入が評価と連動する喜びを知りました。
これは、公務員時代には得られなかった感覚です。
自衛隊にはなかった“競争の中での成長”
自衛隊の評価制度には年功序列的な要素が強く、一定年数が経てば昇任する仕組みも存在していました。
努力しても報われないと感じたことが、何度もありました。
しかし民間では、成果を出した人が評価される。
最初はその競争に不安を感じていました。



「自分は通用するのか。何もできないと思われたらどうしよう。」
そんな不安もありましたが、今は



「評価されるからこそ、次の挑戦が面白くなる。」
という前向きな気持ちへと変わっています。
プライベートの時間は“量より質”で向き合うようになった
民間企業では、祝日や土日も関係なくトレーニングや準備が入ることが多く、代休が取れないこともあります。
この点に関しては、正直なところ不満もあります。



「今日、本当は休みだったのに……」
そう思う瞬間もありますが、それ以上に変わったのは家族との関わり方です。
- 平日はSNSグループチャットで日常のやり取り
- 息子たちの近況や娘の野球の結果報告にリアルタイムで反応
- 奥さんと週末に外食して会話の時間をつくる
時間の“量”ではなく、“質”でつながる意識が強くなりました。
自衛隊に残っていたら、得られなかった価値観
自衛隊に残っていたら、安定はあったと思います。
でも、今のように**「自分の可能性」や「挑戦の面白さ」に気づくことはなかった**かもしれません。



「もし今がんばれば、10年後にもっと上を目指せる。」
そんな確信を持てている今の自分は、確実に転職して変わったと思います。
自衛官の経験は必ず活きる。だから迷っているなら伝えたい。
転職してからの道のりは、決して楽ではありませんでした。
でも、振り返ってみるとこう言えます。
「評価される世界は、想像以上に面白い」



「自衛隊の経験は民間では通用しないんじゃないか。」
そう不安に思っている方もいるかもしれません。
でも私の実感としては、自衛隊で培った
- 安全意識
- 責任感
- 継続力
- 自ら考えて行動する姿勢
これらはすべて、確実に民間でも通用する武器になります。
もし今、転職を迷っている自衛官がいるなら伝えたいです。
あなたの価値は、どこに行っても変わらない。むしろ“場所を変えることで気づけること”がある。